Cosmo-Eggs | 宇宙の卵―コレクティブ以後のアート

下道基行、安野太郎、石倉敏明、能作文徳、服部浩之

¥2,300 (+tax)

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アーティゾン美術館で行われる第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館帰国展「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」に際して、本展の内容をつぶさに振り返り、またそこから発展させた様々な現代におけるトピックを、作家自身や、多彩な表現者との対話によって再考する一冊を刊行します。

 

「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」は、キュレーターの服部浩之を中心に、美術家、作曲家、人類学者、建築家という4つの異なる専門分野のアーティストが協働し、人間同士や人間と非人間の「共存」「共生」をテーマに構成されました。ジャンルの異なる5人によるコレクティブを「共異体」を呼び、「津波石」を起点に、創作神話、映像作品、音楽、その音を出す装置としてのバルーンなど複数の要素が、ひとつの展示空間で共鳴し合います。本書においても、論考、インタビュー、展示風景のみならず、日記形式の制作プロセスや参加作家による振り返り座談までを収録しています。

 

本書では、2022年に開催されるドクメンタ15のディレクターを務めるルアンルパのアデ・ダルマワンや、新しいエコロジー思想を唱える哲学者・思想家の篠原雅武らを迎え、現代美術において注目を集める様々なトピックを考察しています。エッセイにおいても、文化人類学的な視点を含んだアプローチや、音楽と美術の境界、物質として残らない作品や展覧会のアーカイブなど、それぞれが現在的な美術の問題を扱っています。

 

現代の神話が生まれるとき、作家は何を考え、実践したのか──。ひとつの展覧会から広がる可能性の数々、あるいはコレクティブとしての意義を共に考えることで、同時代を生き抜くための指南書となるでしょう。

 

 

[目次]

第1章 展覧会「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」について

・宇宙の卵
・協働の共振や不協和の折り重なりから、共存のエコロジーを問う 服部浩之
・第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」展示風景
・共異体的協働の方法論 服部浩之
・制作プロセス 2018年3月-2020年4月

 

第2章 複数の総論:展覧会「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」を振り返る

・ポータブル・ヘテロトピア―許容する共制作が生む、多様な時間が共存する場 服部浩之
・ヴェネチア・ビエンナーレ日本館と石橋正二郎 田所夏子
・共につくるものに、希望の種を見出す―ヴェネチア・ビエンナーレ日本館「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」を振り返って 下道基行、安野太郎、石倉敏明、能作文徳、服部浩之、田中義久

 

第3章 各論:コレクティブ以後のアート―「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」がもたらしたもの
・コレクティブでつくるアート、それを支える固有の倫理 アデ・ダルマワン 聞き手|服部浩之
・複数の時間を生きる風景―シリーズ《津波石》の制作プロセス 下道基行
・多良間島の津波石 下道基行、石倉敏明
・共異体のフィールドワーク―東アジア多島海からの世界制作に向けて 石倉敏明
・「ゾンビ音楽」の辿った数奇な運命 安野太郎
・人新世のエコロジーから、建築とアートを考える 篠原雅武 × 能作文徳
・体現する印刷物―アーカイブ時代を迎えた美術展のグラフィックデザイン 森大志郎 × 田中義久

 


 

仕様:257mm×182mm/ソフトカバー/248P/モノクロ(一部カラー)/ポストカード付き

編集:柴原聡子、網野奈央

アートディレクション&デザイン:田中義久

デザイン:山田悠太朗

言語:日本語/一部英語

定価:2,300円+税

発行:torch press

ISBN:978-4-907562-20-5 C0070

発行年:2021

 
アーティゾン美術館で開催予定の展覧会はコロナウイルスの影響で延期となりました。開催時期は未定となっております。

 

下道基行(Motoyuki Shitamichi)
1978年生まれ。美術家。代表作に、日本の植民地時代に残された世界各地の鳥居を撮影したシリーズ《torii》や、大津波により海底から陸上に運ばれた巨石を取材し撮影したシリーズ《Tsunami Boulder》がある。
 

安野太郎(Taro Yasuno)
1979年生まれ。作曲家。作曲とメディアアートを学び、アーティストとのコラボレーションも多数実施。代表作《ゾンビ音楽》は、複数のリコーダーに空気を送り込み、自動演奏によって奏でる音楽作品。
 

石倉敏明(Toshiaki Ishikura)
1974年生まれ。人類学者。秋田公立美術大学美術学部准教授。神話や宗教を専門とし、アーティストとの協働制作を行うなど、人類学と現代芸術を結ぶ独自の活動を展開している。
 

能作文徳(Fuminori Nousaku)
1982年生まれ。建築家。建築設計だけでなく、アート作品、空間インスタレーションも手掛ける。2016年第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では日本館展示に出品し、特別表彰受賞。
 

服部浩之(Hiroyuki Hattori)
1978年生まれ。キュレーター。秋田公立美術大学大学院准教授。アジアを中心に展覧会、プロジェクトなどを展開。「あいちトリエンナーレ2016」「近くへの遠回り」(キューバ、2018)など多数企画。