光に住み着く Inhabiting Light – Dialogue on the Edge of the Everyday World

篠原雅武
川内倫子

¥4,200 (+tax)

在庫あり

本書は、哲学者・篠原雅武が書いた文章に対し、川内倫子が写真で返信し、そこに篠原が文章で応答するというような、文章と写真のダイアローグで構成されています。書く際に篠原は、「写真で重要なのは何を撮るかではなく、いかにして撮るか、である」という川内の言葉に、何度も立ち返ったと言います。

 

あとがきには次のように書かれています。「私たちは、現実に何かを経験している。私たちが何かを経験するとき、それがいかにしてこの世に生じてきたかを問うことが大切である。(中略)やりとりを続けつつ私は、写真への応答において問われるのは、出来事が起こるところ、つまりは現実の発生源のような次元に思考を向けていくことではないかと考えるようになった。その次元は、私たちの日々の生活が営まれる、日常世界の表層の奥底にある」。そこには、写真から立ち現れるさまざまな感覚や感情、そこから紐解かれる思考の軌跡が言葉として生まれ落ちています。文章と写真が相互に関わり合いながら、「光」という主題の深層を探っていきます。

 


 

私たちがいるところを想像するとは、どのようなことなのか。まずは、私たちは「どこかにいる」ということに、意識的になってみたい。つまり、「いるということ」、つまりは存在することは、なんらかの場において生きることだが、私たちが存在しているところは「どこか」としてある。そして私たちは、広大な自然の只中においてたまたまいさせてもらっているのだとしたらどうだろうか。たとえ私たちのいる場所が人為的に構築されていて定まったところだとしても、それでもその場所は、「自然としかいいようのないもの」の表層に漂う、儚いところであるよりほかない。

 

篠原雅武(本文より)

 


 

文:篠原雅武

写真:川内倫子

仕様:252 x 180 mm/仮フランス装・丸背/136P

デザイン:須山悠里、小河原美波

言語:日本語/英語

定価:4,200円+税

発行:torch press

ISBN978-4-907562-55-7 C0072

発行年:2025

 

篠原雅武

1975 年、横浜市生まれ、京都市在住。京都大学大学院総合生存学館特 定准教授。哲学や思想の研究を中心にして、現代美術や建築との接点 で考えている。人間が存在することの条件に関して考察を行ない、文 章を書いている。主な著書に『複数性のエコロジー』(以文社、2016 年)、 『人新世の哲学』(人文書院、2018 年)、『「人間以後」の哲学』(講談社、 2020 年)。

 

川内倫子

1972年滋賀県に生まれる。2002年『うたたね』『花火』の2冊で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞。著作は他に『AILA』(05年)、『the eyes, the ears,』『Cui Cui』(共に05年)、『Illuminance』(2011年、改訂版2021年)、『あめつち』(13年)などがある。2009年にICP(International Center of Photography)主催の第25回インフィニティ賞芸術部門、2013年に芸術選奨文部科学大臣新人賞(2012年度)、2023年に「ソニーワールドフォトグラフィーアワード特別功労賞」を受賞。主な個展に、2005年「AILA + Cui Cui + the eyes, the ears,」カルティエ現代美術財団(パリ)、2012年「照度 あめつち 影を見る」(東京都写真美術館)、2016年「川が私を受け入れてくれた」(熊本市現代美術館)、2022~2023年「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」(東京オペラシティ アートギャラリー、滋賀県立美術館)ほか多数。近刊に写真集『やまなみ』『いまここ』(谷川俊太郎との共著)がある。個展「M/E a faraway shining star, twinkling in hand」が各国のFotografiskaで世界巡回中。